テーマ解説 — AI利活用
生成AIは、職場でも当たり前の道具になりつつあります。ところが「便利だけど、どこまで信じていいのか分からない」という声もよく聞きます。このページでは、ITが専門でない方に向けて、AIを業務で安全に使いこなすための考え方を現場の言葉で解説します。
これらはすべて「AI利活用」のテーマです。大事なのは、どれもAIが壊れているわけではないということ。AIの得意・不得意と仕組みを知り、人が確かめる場面を決めておく——これが、AIを業務で使いこなすための基本的な考え方です。
AIとの付き合い方は、とても物知りだけれど、今日入社したばかりの新人を思い浮かべると分かりやすくなります。一般的な知識は驚くほど豊富で、文章を書くのも速い。でも、あなたの会社の規程や昨日の会議の中身は知りませんし、分からないことでも自信満々に答えてしまうことがあります。
そんな新人に仕事を頼むとき、あなたはきっと、必要な資料を渡し、やってほしいことを具体的に伝え、出てきた成果物を確認してから使うはずです。AIもまったく同じです。
なお、AIには大きく2つのタイプがあります。過去のデータから「この顧客は解約しそうか」「来月の売上はいくらか」を予測・判定するのが識別AI。文章や画像などを新しく作り出すのが生成AIです。最近話題のAIは主に後者ですが、需要予測や不良品の検知など、識別AIも以前から業務で使われています。
カタカナが多い分野です。名前より「新人に仕事を頼むときの何にあたるか」で覚えるのがおすすめ
| 試験用語 | 現場の言葉でいうと | 職場での例 |
|---|---|---|
| ハルシネーション | もっともらしい作り話 | 存在しない旅費規程の条文を、それらしく答える |
| システムプロンプト | 最初に渡す業務マニュアル | 「社内向けの問合せ窓口として、丁寧語で、分からないことは分からないと答える」と、あらかじめ指示しておく |
| プロンプトエンジニアリング | 頼み方の工夫 | 「要約して」ではなく「部長向けに、結論から3行で、数字は原文のまま」と具体的に頼む |
| RAG(検索拡張生成) | 社内資料を見ながら答えさせる | 旅費規程の最新版を検索して、その内容に基づいて答えさせる |
| ランダム性の制御 | 答えのブレ幅のつまみ | 定型の回答では毎回同じような答えに、アイデア出しでは幅広い答えになるよう調整する |
| AIエージェント | 自分で手順を考えて動く代行者 | 「来週の出張を手配して」と頼むと、日程の確認から予約の下書きまで自分で進める |
| 自律性と人間の関与 | 最後のボタンは人が押す | 予約やメール送信の直前で止まり、人が内容を確認して承認する |
| ガードレール | やってはいけないことの柵 | 社外へのメール送信や支払いの操作はできないように、AIが動ける範囲を制限しておく |
こうして並べると、どれも「新人に資料を渡す」「頼み方を工夫する」「勝手にやってはいけないことを決める」「最後は上司が確認する」という、人に仕事を任せるときの当たり前を言い換えたものだと分かります。
生成AIは、膨大な文章から学んだパターンをもとに、「この次に来る言葉として、もっともらしいもの」を予測して文章を作っています。事実を調べて答えているのではなく、もっともらしい文章を組み立てているのです。冒頭の「あるある」は、ここから生まれます。
つまり、AIの間違いは「たまたまの故障」ではなく「仕組み上、起こり得るもの」です。だからこそ、「AIが間違えないこと」を期待するのではなく、間違えても困らない使い方を決めておくことが大切になります。
会社のAI利用ルールを確認し、入力してよい情報・いけない情報を把握します。顧客の個人情報や取引先の秘密情報を、許可されていないAIサービスに入力してはいけません。国もAI事業者ガイドラインで、AIを利用する事業者が気を付けることを示しています。
新人に頼むときと同じく、根拠にしてほしい資料を渡し(RAGの考え方)、目的・相手・形式を具体的に伝えます。「数字は原文のまま」「分からなければ分からないと答える」と添えるだけでも、間違いは減らせます。
出てきた答えは元の資料と突き合わせ、特に数字・固有名詞・日付は必ず確認します。出典が示されていれば、その出典を自分で開いて確かめる。最終的な判断と責任は人が持ちます。
AIエージェントのように自分で操作まで進めるAIでは、STEP 3を仕組みに組み込むことが欠かせません。メール送信や支払いなど、取り消しにくい操作の前には必ず人の承認を挟む(自律性と人間の関与)、そもそも危ない操作はできないようにしておく(ガードレール)、という設計です。シラバス案では、こうしたAIを安全に動かすための周辺の仕組みづくりを指す「ハーネスエンジニアリング」という新しい言葉も用語例に入っています。
AIに渡すデータや、AIが作ったデータをどう管理するかは、データマネジメントの新しい課題でもあります。AIの答えの質は、渡したデータの質を超えません。データ品質やメタデータの整備は、AIを活用するための土台でもあるのです。
EXAM NOTE — データマネジメント試験(仮称)
2026年8月31日公開のシラバス案 Ver.0.1 では、中分類10「AI利活用」が科目Aの重点分野の一つになっています。用語例には、人間中心のAI社会原則やAI事業者ガイドライン、識別AIの活用目的(教師あり学習による予測、教師なし学習によるグルーピングなど)、生成AIのランダム性の制御・RAG・プロンプトエンジニアリング・システムプロンプト、AIエージェントの自律性と人間の関与(最終承認、例外処理など)やガードレールが並びます。
また、その他の分野の中分類27「情報倫理・AI倫理」では、ハルシネーションや出典元データの出処を確認することの必要性、AIガバナンスが挙げられています。用語の意味に加えて、「AIの出力をどう扱うべきか」という使い手としての判断が問われると考えられます。なお、2026年6月公開の公式サンプル問題には、AIを正面から題材にした問題はまだありません。
ITパスポート試験でも問われます。シラバス案Ver.0.1の中分類10「AI利活用」にはガードレールなどが、中分類27にはハルシネーションなどが用語例として挙げられています。分野構成の変化はITパスポート試験はこう変わるで整理しています。
例題 — 力だめしに1問どうぞ
AIエージェント利活用における「ガードレール」の説明として、最も適切なものはどれか。
正解:ア
AIエージェントは自分で判断して手順を進めるため、放っておくと想定外の行動を取り得ます。そこで動ける範囲をあらかじめ制限し、重要な場面では人間が承認する。これがガードレールです。道路のガードレールが車の走行を妨げるのではなく、逸脱を防いで安全に走らせるための設備であるのと同じ発想です。ウの「一度に入力できるデータ量の上限」は別の概念で、イ・エは性能や通信の話であり、安全性への配慮という趣旨とは関係がありません。
出典:本サイト作成のITパスポート試験のオリジナル問題(IPA公式の問題ではありません)。データマネジメント試験(仮称)でも同じ中分類10の用語例です。オリジナル問題演習で続きが解けます。
2019年に政府が取りまとめた、AIを社会で使っていくうえでの基本原則。人間中心、プライバシーの確保、公平性・説明責任・透明性などを掲げている。
総務省と経済産業省が2024年に公表したガイドライン。AIを開発する事業者・提供する事業者・利用する事業者のそれぞれが取り組むべきことを示している。
正解の付いた過去のデータから予測を学ぶのが教師あり学習(売上予測など)。正解なしで、似たもの同士をグループに分けるのが教師なし学習(顧客のグループ分けなど)。
テキストだけでなく、画像・音声・動画など複数の種類のデータを組み合わせて理解・生成できるAI。写真を見せて質問する、といった使い方ができる。
組織がAIを安全・適切に使うためのルールや体制を整え、守られているかを見守ること。データの決めごとを扱うデータガバナンスのAI版と考えると分かりやすい。
※ 本ページの解説・たとえ話・用語の言い換えは本サイト独自のものです。2026年8月31日公開のデータマネジメント試験(仮称)シラバス案 Ver.0.1 で、「AI利活用」が科目A重点分野(中分類10)であり、本ページで扱った用語が中分類10・中分類27の用語例に含まれることを確認しています。