このページについて
2026年9月30日、IPAが基本情報技術者試験(FE)のシラバス案 Ver.0.1を公開しました。新試験制度では、基本情報技術者試験の上にあった応用情報技術者試験と高度試験がプロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称)に再編されますが、基本情報技術者試験そのものは「継続」する区分です。試験時間・出題数・科目A免除制度は現行のままで、IPAは「試験で問う知識・技能の範囲そのものに変更はない」と説明しています。
一方で、出題範囲の体系は全試験区分共通の「30中分類」に載せ替えられます。重点分野は大分類5「システムの開発・運用」の3中分類で、これはITパスポート試験では範囲外になった領域です。用語例には、AI駆動開発やAIエージェント技術、そして本サイトが追っているデータマネジメントが入りました。
このページでは、経済産業省とIPAが示した見直しの考え方に沿って、新試験制度のなかでこの試験がどこに置かれたのかを整理し、シラバス案の中身を読み解きます。位置づけの読み取りや社会変化との対応づけは本サイトの解釈であり、IPAが明示しているものではない点にご注意ください。
2026年10月3日時点のIPA・経済産業省の公開情報をもとに作成
新試験制度での扱い
継続。IPAは見直しのポイントとして「科目Aの出題範囲体系の変更」「科目Bの出題範囲の一部変更」の2点を挙げ、注釈で「技術動向や環境変化等を踏まえて表記の変更等を行うもので、試験で問う知識・技能の範囲そのものに変更はありません」としている。
試験時間・出題数
科目Aは90分・60問、科目Bは100分・20問。
科目A免除制度
「2027年度の新試験制度において、基本情報技術者試験の科目A免除制度…については、変更を予定していません」とIPAが明記している。
開始時期
2027年度春頃。ITパスポート試験・情報セキュリティマネジメント試験と同時で、データマネジメント試験・プロフェッショナルデジタルスキル試験・情報処理安全確保支援士試験(2027年度夏頃から秋頃)より先に移行する。経済産業省は「現時点の開始時期見込みであり、試験の準備状況によっては、遅れる可能性があります」としている。現行試験制度は2026年度の試験実施をもって終了する予定。
実施方式・実施回数
CBT方式。「これまでと同様に通年で試験を実施する予定」とされている。
シラバス案
「基本情報技術者試験 シラバス(案)Ver.0.1」が2026年9月30日に公開。全36ページ。科目Aは重点分野3中分類・その他の分野26中分類、科目Bは5つの大項目で構成されている。内容は公表時点の検討状況に基づくもので、変更する可能性があるとIPAが明記している。
サンプル問題
IPAのサンプル問題掲載ページ(最終更新2026年8月31日)に、基本情報技術者試験のサンプル問題は掲載されていない。
シラバスの確定版
現時点で公開されているのは「案」のVer.0.1。確定版の公表時期は未発表。
経済産業省「情報処理技術者試験における試験区分体系などの見直し(案)について」(2026年3月31日)と、IPA「出題範囲等の改定案 Ver.1.0」より
経済産業省は見直しの背景として、AI等のデジタル技術の急速な進化で必要なスキルの移り変わりが激しくなっていること、AIの登場でその前提となるデータの重要性が高まっていることを挙げています。そのうえで国家試験の体系を、「分業を前提とした開発体制に必要な特定の人材像を目指す」ものから、「『土台』としての幅広いスキルを身につけることでAIも活用して新たな価値創造を行う人の目標となる」ものへ見直すとしました。
「分業を前提とした開発体制」という言葉は、基本情報技術者試験がこれまで入口になってきた世界そのものを指しています。その世界の上位区分が再編されるなかで、この試験がどう置かれたかを公表資料から拾うと次のようになります。
| 公表資料の記載 | そこから読み取れること |
|---|---|
| 試験の概要(改定案 Ver.1.0) 「デジタル技術を活用したサービス、プロダクト、システム及びソフトウェアを作る基本的な知識及び技能」 |
現行の試験要綱は対象者像を「ITを活用したサービス、製品、システム及びソフトウェアを作る人材」と書いています。「作る」という軸は変わっていません。語は「IT」から「デジタル技術」に、「製品」から「プロダクト」に替わりました。 |
| 出題範囲表の注記(改定案 Ver.1.0) ITパスポート試験・データマネジメント試験・情報セキュリティマネジメント試験は「データ及びデジタル技術を効果的、効率的及び安全に利活用する際に必要となる知識を主に出題する」 |
この注記に基本情報技術者試験は含まれていません。科目Aが4試験で同じ表を共有するなかで、利活用する側の3試験と、作る側の基本情報技術者試験が書き分けられています。 |
| 重点分野(改定案 Ver.1.0・シラバス案 Ver.0.1) 中分類20「システムライフサイクルプロセス」、21「開発・運用の方法論」、22「アルゴリズム・プログラミング」 |
この3中分類は、ITパスポート試験・データマネジメント試験・情報セキュリティマネジメント試験のいずれでも出題範囲に入っていません。大分類5「システムの開発・運用」を担うのは、この段階では基本情報技術者試験だけです。 |
| スキルの発揮場面(改定案 Ver.1.0) 「価値の高いサービス、プロダクト、システム及びソフトウェアの提供にチームの一員として貢献するために、システム及びソフトウェアの設計、ソフトウェアの実装・テスト、システム運用などに参加する又は一部を担当する場面」 |
「チームの一員として」「参加する又は一部を担当する」という水準です。主導する立場は、上位のプロフェッショナルデジタルスキル(システム)試験(仮称)の概要文「要件定義・アーキテクチャ設計・開発・運用を主導する」に書かれています。 |
| 上位区分の再編(経済産業省) 応用情報技術者試験と高度試験を大括り化し、マネジメント、データ・AI、システムの3領域、3試験に再編。3領域の習得を推奨 |
これまでは基本情報の次が応用情報の1本でした。新試験制度では、次の段階が3つの領域に分かれ、しかも3つすべての習得が推奨されます。基本情報技術者試験の科目Aが、開発・運用だけでなくビジネス変革、データ・AIの利活用、セキュリティまで29中分類を範囲にしているのは、その3領域すべての下地になるためと読めます。 |
まとめると、基本情報技術者試験は新試験制度で「作る側の土台」として位置づけられたと読めます。特定の職種の入口というより、システムを作る知識・技能を軸にしながら、データ・AI・セキュリティ・ビジネスまで幅広く押さえる試験です。なお経済産業省は、プロフェッショナルデジタルスキル試験の1つの試験に合格することが応用情報技術者試験の合格と同等と位置づけられる、としています。
現行シラバス Ver.9.2・試験要綱 Ver.5.6 と、シラバス案 Ver.0.1・改定案 Ver.1.0 を比較
| 項目 | 現行 | 新試験制度(案) |
|---|---|---|
| 試験時間・出題数 | 科目A 90分・60問、科目B 100分・20問 | 同じ |
| 実施方式 | CBT方式・通年実施 | 同じ(通年で実施する予定) |
| 科目A免除制度 | あり | 変更を予定していない |
| 科目Bの大項目 | プログラミング全般/プログラムの処理の基本要素/データ構造及びアルゴリズム/プログラミングの諸分野への適用/情報セキュリティの確保 | 同じ5つの見出し。プログラム言語は擬似言語を扱う、という注記も同じ |
| 科目Aの体系 | テクノロジ系・マネジメント系・ストラテジ系の3分野、23中分類 | 全試験区分共通の3分野・7大分類・30中分類に載せ替え。基本情報技術者試験の範囲は、中分類7「マインド・スタンス」を除く29中分類 |
| 科目Aの重点分野 | (試験要綱の出題分野一覧ではセキュリティが重点分野) | 中分類20「システムライフサイクルプロセス」、21「開発・運用の方法論」、22「アルゴリズム・プログラミング」 |
体系の載せ替えで、現行の中分類がどこへ行くのか。IPAは2026年3月31日に「科目Aの出題範囲体系案(新旧対応表)」を公表しています。重点分野の3中分類に何が集まるかを、その表から抜き出しました。
| 新しい中分類 | IPAの新旧対応表で、ここに対応づけられている現行の内容 |
|---|---|
| 20 システムライフサイクルプロセス | 「システム開発技術」の全ての内容(オブジェクト指向、UMLなど、システム開発に用いるツールや手法を除く)、「ソフトウェア開発管理技術」の開発プロセス、「サービスマネジメント」のシステム運用管理・運用オペレーション |
| 21 開発・運用の方法論 | 「システム開発技術」のうちオブジェクト指向・UMLなどのツールや手法、「ソフトウェア開発管理技術」の開発プロセス・手法、開発環境管理、構成管理・変更管理。加えて、「ハードウェア」の全ての内容、「ソフトウェア」のうちオペレーティングシステムの機能(カーネル、ジョブ管理、タスク管理など)・ミドルウェア・開発ツール・オープンソースソフトウェア、「基礎理論」の計測・制御に関する理論、Webプログラミング、画面設計・帳票設計・コード設計・Webデザイン、ファシリティマネジメント |
| 22 アルゴリズム・プログラミング | 「基礎理論」の離散数学、応用数学、情報に関する理論、通信に関する理論(確率と統計、AIに関する技術を除く)、「アルゴリズムとプログラミング」の全ての内容(Webプログラミングを除く) |
シラバス案 Ver.0.1 の用語例と、ここ数年の社会の動きの対応関係
範囲そのものは変わらないとされていますが、用語例には新しい語が入っています。下の表の右列で太字にした語は、現行シラバス Ver.9.2 のPDFに文字列として見当たらなかったものです。
| 社会の変化 | シラバス案 Ver.0.1 での現れ方 |
|---|---|
| コードを書く作業そのものにAIが入った | 中分類21に小分類「AI駆動開発・AIプロジェクト」が立つ。バイブコーディング、エージェンティックコーディング、仕様駆動開発(SDD)、AIペアプログラミング、マルチエージェント、エージェント向け指示ファイル(AGENTS.md、Agent Skills)、アーキテクチャ決定記録(ADR)、仕様と生成コードのトレーサビリティ、品質ゲート、AI生成コードの検証(品質・セキュリティのレビュー、ライセンス・著作権の確認) |
| AIが外部のツールを呼び出して動くようになった | 中分類18「AI技術」に小分類「AIエージェント技術」。ツール連携(API連携、Function Calling)、長期記憶、MCP(Model Context Protocol)。生成AI技術の用語例に Transformer、コンテキストウィンドウ、蒸留、量子化 |
| AIの前提としてデータの重要性が高まった | 中分類8「データマネジメント」が出題範囲に入る。データガバナンス、DIKWモデル、データスペース、データ品質管理、メタデータ管理、データスチュワード、データエンジニア、データアーキテクト |
| 開発の現場で使う道具が入れ替わった | フレームワークや道具が実名で並ぶ。フロントエンド(React、Angular、Vue.js、Next.js)、バックエンド(Spring、Django)、データ・機械学習(TensorFlow、PyTorch、scikit-learn)、開発・運用支援(Git、Jenkins、Ansible)、言語に TypeScript |
| 作って終わりではなく、動かし続けることが開発の一部になった | DevOpsの項目に SRE、継続的インテグレーション(CI)、継続的デリバリー(CD)、カオスエンジニアリング、オブザーバビリティ(可観測性)、DevSecOps。中分類15にクラウドネイティブ、サーバレス、コンテナオーケストレーション、IaC |
| AIシステム自体が攻撃の対象になった | 中分類23に「AIシステムに対する攻撃」。プロンプトインジェクション、ジェイルブレイク、敵対的サンプル、データポイズニング。あわせてゼロトラスト、パスキー |
シラバス案 Ver.0.1【目標とする知識(重点分野)】より、用語例のうち特徴的なものを本サイトが抜粋・整理
【内容】システム及びソフトウェアを要件定義から運用・保守・廃棄までのライフサイクルで捉えて、開発プロセス間のつながりや成果物、品質確保などを意識して適切な開発を行うために必要な、システムとソフトウェアのライフサイクルプロセスに関する基本的な知識を問う。
要件定義から廃棄までを一続きで捉える、というのがこの中分類の軸です。小分類が「開発プロセスの概要→要件定義→設計→実装・構築→統合・テスト→導入・受入れ支援→運用→保守・廃棄」と、ライフサイクルの順に並んでいます。
AI駆動開発の用語例が「AIに書かせる方法」だけで終わっていない点に注目です。仕様と生成コードのトレーサビリティ、品質ゲート、品質・セキュリティのレビュー、ライセンス・著作権の確認と、AIが書いたコードを人がどう検証し責任を持つかまでが並んでいます。
【内容】ソフトウェア設計に基づいて、適切なデータ構造及びアルゴリズムを選択し、効率的かつ効果的なプログラムを作成するために必要な、アルゴリズムとプログラミングに関する基本的な知識を問う。
ITパスポート試験では範囲外になったアルゴリズム・プログラミングと情報理論が、ここでは重点分野です。基礎理論は基本情報技術者試験以降で学ぶ、という切り分けがはっきりしました。
シラバス案 Ver.0.1【目標とする知識(その他の分野)】より抜粋・整理
その他の分野は26中分類と広範囲です。ここでは本サイトのテーマに直結する大分類2「データ・AIの利活用」と、中分類18「AI技術」を取り上げます。それぞれの【内容】は、作る側がなぜそれを知る必要があるのかを書いています。
【内容】データを単なるシステム上の処理対象としてではなく、組織の重要な資産として捉え、データの品質や整合性などを意識したシステム及びソフトウェアの設計・実装を行うために必要な、データマネジメントに関する基本的な知識を問う。
「データを単なるシステム上の処理対象としてではなく、組織の重要な資産として捉え」という一文は、データガバナンスの考え方そのものです。ITパスポート試験の同じ中分類と比べると、データガバナンスの運営体制(CDO、DMO、データオーナー、データスチュワード)が用語例に加わっています。エンジニアが、自分の作るシステムのデータについて誰が責任を持つのかを知っておく、という設計です。
【内容】システム開発において、対象システムを単なる業務処理の仕組みとしてではなく、データ利活用を支える基盤として捉え、組織のデータ利活用を意識したシステム及びソフトウェアの設計・実装を行うために必要な、データ分析・データ利活用に関する基本的な知識を問う。
現行の「基礎理論」にあった確率と統計は、IPAの新旧対応表でこの中分類に対応づけられています。
中分類10の【内容】には「AIでできること/できないことを判断し、適切なAI活用の提案を行う」とあります。使い方を知るだけでなく、要望を受けたときに技術的に可否を判断する側に立つことが想定されています。
シラバス案 Ver.0.1【目標とする技能】より
| 大項目 | 小項目 |
|---|---|
| 1 プログラミング全般に関すること 注記:プログラム言語について、擬似言語を扱う |
実装するプログラムへの要求事項の把握/プログラムの詳細設計(入出力、処理、データ構造、アルゴリズムほか)/使用するプログラム言語の仕様に基づくプログラムの実装/既存のプログラムの解読及び変更、処理の流れや変数の変化の追跡/プログラムのテスト/プログラムのデバッグ(誤りの特定及び修正) |
| 2 プログラムの処理の基本要素に関すること | 型、変数、配列、代入/算術演算、比較演算、論理演算/選択処理、繰返し処理/手続・関数の呼出し |
| 3 データ構造及びアルゴリズムに関すること | 再帰、スタック、キュー、木構造、グラフ、連結リスト/整列、文字列処理 |
| 4 プログラミングの諸分野への適用に関すること | 数理・データサイエンス・AIなどの分野を題材としたプログラム(統計量の算出、データの集計・加工、行列やベクトルの演算ほか) |
| 5 情報セキュリティの確保に関すること | 情報セキュリティ要求事項の提示(物理的な管理策、技術的な管理策ほか)/マルウェアからの保護、バックアップ、ログ取得及び監視、情報の転送における情報セキュリティの維持、脆弱性管理、利用者アクセスの管理、運用状況の点検 |
5つの大項目の見出しは、現行の試験要綱 Ver.5.6 に載っている科目Bの出題範囲と同じです。AI駆動開発が科目Aの用語例に入った一方で、科目Bは擬似言語のプログラムを自分で読み、追跡し、直す技能を問うままです。AIにコードを書かせる時代でも、書かれたコードを読んで正しさを判断する力は試験の中心に残されています。
大項目5「情報セキュリティの確保」の小項目は、情報セキュリティマネジメント試験の科目Bの大項目6「部門の情報システム利用時の情報セキュリティの確保」と同じ7項目(マルウェアからの保護、バックアップ、ログ取得及び監視、情報の転送、脆弱性管理、利用者アクセスの管理、運用状況の点検)です。情報セキュリティマネジメント試験が「部門のメンバーの理解を深め、順守を促進する」側から問うのに対し、基本情報技術者試験は「組織内諸規程に従った対策を実施する」側から問う、という違いがあります。
新試験制度の全体像や、ほかの区分の変更点もあわせてどうぞ。
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※ 本ページの位置づけの読み取り、現行シラバスとの比較、および「社会変化との対応関係」は本サイト独自のものです。シラバス案はVer.0.1であり、確定版で内容が変わる可能性があります。