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ITパスポート試験はこう変わる

このページについて

2026年8月31日、IPAがITパスポート試験のシラバス案 Ver.0.1とサンプル問題(4問)を公開しました。読んでみると、これは「用語をいくつか入れ替えた」という規模の改訂ではありません。2009年のITパスポート試験創設以来続いてきたストラテジ系・マネジメント系・テクノロジ系という分野の建て付けそのものが解体され、「ビジネス/テクノロジ/セキュリティ・倫理」の3分野に組み替えられます。

そして新体系のまん中には、大分類2「データ・AIの利活用」が座っています。ここには「データマネジメント」という中分類が入っており、本サイトが追いかけているデータマネジメント試験(仮称)の重点分野と同じ枠組みです。ITパスポートは、データマネジメント試験の入口として明確に位置づけ直されたと読めます。

このページでは、シラバス案 Ver.0.1 で何が変わったのかを整理し、あわせてその変更がどのような社会変化から生じたものなのかを読み解きます。因果関係の読み取りは本サイトの解釈であり、IPAが明示しているものではない点にご注意ください。

012026年8月31日に公開されたもの

2026年9月4日時点のIPA公開情報をもとに作成

シラバス案

「ITパスポート試験 シラバス(案)Ver.0.1」が2026年8月31日に公開。全22ページで、新体系の大分類・中分類ごとに小分類・項目・用語例が示されている。内容は公表時点の検討状況に基づくもので、変更される可能性があるとIPAが明記している。

公開済み

サンプル問題

同日に4問が公開。内訳はマインド・スタンス分野1問/データマネジメント分野2問/情報倫理・AI倫理分野1問。いずれも新設・再編された分野からの出題で、新体系のどこに重心があるかを示している。

公開済み

出題範囲(大枠)

2026年3月公開の「出題範囲等の改定案 Ver.1.0」で、全試験区分共通の3分野・7大分類・30中分類の体系が確定済み。ITパスポート試験の出題範囲は、このうち26中分類(大分類5「システムの開発・運用」の中分類20〜22と、中分類26「セキュリティ実装技術・評価」を除く)。

確定

評価される水準

改定案では、ITパスポートは〔知識〕4項目に加えて〔マインド・スタンス〕という枠が設けられ、「社会、ビジネス環境及び顧客ニーズの変化を認識し、DXの重要性を理解して自分事として捉え、変革に向けて行動するマインド・スタンス」を評価するとされている。知識だけを問う試験ではなくなる。

確定

開始時期

2027年度から新試験制度が開始予定。ITパスポート試験は、情報セキュリティマネジメント試験・基本情報技術者試験とともに先行して移行する区分と位置づけられている(データマネジメント試験・プロフェッショナルデジタルスキル試験はその後)。

確定

シラバスの確定版

現時点で公開されているのは「案」のVer.0.1。確定版の公表時期は未発表。

検討中

試験時間・出題数・実施方式

新制度でのITパスポート試験の時間・問題数について、現時点で本サイトが確認できた公表情報はない。

準備中

02いちばん大きな変化は、分野の建て付けそのもの

「出題範囲等の改定案 Ver.1.0」に基づく全試験区分共通の体系

現行のITパスポート試験はストラテジ系・マネジメント系・テクノロジ系の3分野で組み立てられています。これは「経営の話」「開発とプロジェクトの話」「技術の話」という、情報システムを作る側から見た切り分けでした。新体系では、この3分野が解体され、次のように組み替えられます。

分野 大分類 中分類 IPの出題範囲
ビジネス 1 ビジネス変革 1 ビジネス変革の方法論/2 経営戦略・デジタル戦略/3 ビジネスモデル・ビジネスプロセス/4 サービスマネジメント/5 プロジェクトマネジメント/6 デザインのアプローチ/7 マインド・スタンス 全て範囲
ビジネス 2 データ・AIの利活用 8 データマネジメント/9 データ分析・データ利活用/10 AI利活用 全て範囲
ビジネス 3 組織活動 11 経営・組織論/12 ガバナンス・監査 全て範囲
テクノロジ 4 デジタル技術 13 デジタルサービス・デジタルツール/14 システムの種類・構成/15 クラウド/16 ネットワーク/17 データベース/18 AI技術/19 情報デザイン・情報メディア 全て範囲
テクノロジ 5 システムの開発・運用 20 システムライフサイクルプロセス/21 開発・運用の方法論/22 アルゴリズム・プログラミング 範囲外
セキュリティ・倫理 6 セキュリティ 23 情報セキュリティの脅威/24 情報セキュリティマネジメント/25 情報セキュリティ対策/26 セキュリティ実装技術・評価 23〜25が範囲
(26は範囲外)
セキュリティ・倫理 7 倫理・コンプライアンス 27 情報倫理・AI倫理/28 ビジネス関連法規/29 プライバシー関連法規/30 セキュリティ関連法規 全て範囲
この体系は全試験区分に共通です:同じ30中分類の表を、ITパスポート・データマネジメント試験・情報セキュリティマネジメント試験・基本情報技術者試験、そしてプロフェッショナルデジタルスキル試験の科目A-1が共有します。区分ごとに違うのは「どの中分類が範囲か」「どこが重点分野(◎)か」だけです。つまりITパスポートで学ぶ枠組みが、そのまま上位区分の枠組みになるという設計になっています。太字は新設・再編で新しく立った分類(本サイトによる判断)。
いま勉強している分野がどこへ行くのか知りたい方へ:この表は新しい体系だけを示したものです。現行シラバス Ver.6.5 の23個の中分類が、それぞれ新シラバス案のどこへ移るのかを1つずつ対応づけた表を別ページにまとめました。IPAが公表している新旧対応表は全試験区分共通の中分類レベルのもので、ITパスポートのシラバス単位ではないため、本サイト独自の対応づけです。→ ITパスポート 新旧シラバス対応表

03この改訂の背景にある社会変化

シラバス案の用語例から読み取れる、変更と社会の動きの対応関係

シラバス案に並ぶ新しい用語を眺めると、それぞれが「ここ数年で社会の側に起きたこと」に対応していることが見えてきます。整理すると次の6つになります。

社会の変化 試験への反映
生成AIが一般の業務に浸透し、さらにAIエージェントが実務に入り始めた 中分類10「AI利活用」が新設され、識別AI・生成AI・AIエージェントが並列で立つ。中分類18「AI技術」にLLM・コンテキスト内学習・RAG。用語例にAX(AIトランスフォーメーション)、フロンティアAIの影響、フィジカルAI、ガードレール、自律性と人間の関与が入った
データ活用が情報システム部門の仕事ではなく、業務部門自身の仕事になった 大分類2「データ・AIの利活用」がビジネス分野の独立した大分類に昇格。中分類8「データマネジメント」でデータガバナンス・データライフサイクル・データ品質管理・メタデータ管理・DIKWモデルを扱う。従来テクノロジ系に散っていたデータの話が、ビジネスの話として括り直された
DXの障壁が技術ではなく人と組織の側にあると認識され、デジタルスキル標準(DSS)が整備された 中分類7「マインド・スタンス」が新設され、知識ではなく行動・姿勢が出題対象に。中分類6「デザインのアプローチ」(人間中心設計・カスタマージャーニーマップ・ユーザビリティテスト)も新設。中分類1にイノベーションマネジメント・チェンジマネジメントが入った
偽情報・ディープフェイク・SNSでの分断が社会問題として可視化された 大分類7「倫理・コンプライアンス」が独立。中分類27「情報倫理・AI倫理」にデジタルシティズンシップ、偽情報(ディスインフォメーション)/誤情報(ミスインフォメーション)/悪意ある情報(マルインフォメーション)、エコーチェンバー、フィルターバブル、デジタルタトゥー、ファクトチェック、説明可能なAI(XAI)、ヒューマンインザループ(HITL)
ランサムウェア被害・サプライチェーン攻撃が常態化し、量子計算機の脅威も現実味を帯びた 大分類6「セキュリティ」に3中分類が割かれる。ゼロトラスト、パスキー、耐量子計算機暗号(PQC)、イミュータブルバックアップ、EDR、3つのラインモデル、そして「AIを悪用した攻撃」(フィッシングの巧妙化、マルウェア亜種の生成、ディープフェイク)とプロンプトインジェクションが用語例に加わった
AI・GX・取引適正化をめぐる立法が相次いだ 中分類28にAI基本法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)、情報流通プラットフォーム対処法、GX推進法、中小受託取引適正化法(取適法)、限定提供データ。中分類30にサイバー対処能力強化法が入った
この対応表について:左列の「社会の変化」は、シラバス案に並ぶ用語から本サイトが読み取った解釈です。IPAが「この社会変化を受けてこの項目を追加した」と因果を明示しているわけではありません。右列に挙げた用語・分類名はすべて公開資料に実在するものです。

04変化① データ・AIの利活用が独立した大分類になる

ITパスポート試験 シラバス案 Ver.0.1 より、用語例のうち特徴的なものを本サイトが抜粋・整理

現行のITパスポートでも「ビッグデータ」「データマイニング」といった語は登場していました。しかしそれらは経営戦略やデータベースの話の一部として散らばっていました。新体系では、データとAIだけで一つの大分類を占め、その先頭に「データマネジメント」が置かれています。

中分類8:データマネジメント 新設

【内容】担当業務で日々発生するデータを適切に管理して、データを業務改善や意思決定に利活用できるようにするために必要な、データマネジメントに関する基礎知識を問う。

  • データマネジメントの目的と考え方:データドリブン経営、データマネジメント、データガバナンス、データライフサイクル、DIKWモデル
  • データマネジメントの機能:データマネジメント機能(マネジメント(行政)、ガバナンス(司法・立法)、アーキテクチャ など)、データ品質管理、メタデータ管理
  • データライフサイクルの機能:生成、保管、処理、活用、廃棄

この中分類の小分類は、本サイトのテーマ解説で扱っている5テーマ(データガバナンス/データ品質/メタデータ/データドリブン経営/データ基盤)とほぼそのまま重なります。ITパスポートで名前を覚え、データマネジメント試験で実務の判断まで問われる、という段階設計になっていると読めます。

中分類9:データ分析・データ利活用
  • データ基盤の特徴:データ基盤の役割(蓄積・加工・分析・活用)、データレイクの役割、データウェアハウス(DWH)の役割、データマートの役割、ELT/ETL
  • データの種類と特徴:人の行動ログデータ、機械の稼働ログデータ、ソーシャルメディアデータ、1次データ、2次データ、構造化データ、非構造化データ、ビッグデータ、オープンデータ、パーソナルデータ
  • データの加工・分析:データ結合、名寄せ、外れ値・異常値・欠損値の処理、アノテーション、季節調整、移動平均、データマイニング、テキストマイニング
  • 統計的手法:確率、順列、組合せ、代表値、回帰分析、相関分析、擬似相関、尺度(名義・順序・間隔・比例)、仮説検定、標本抽出、統計的バイアス、認知バイアス
  • 可視化:棒グラフ、折れ線グラフ、ヒートマップ、レーダーチャート

データレイク/DWH/データマートの役割の違いや、ELT/ETLといった語がITパスポートの用語例に入っている点が目を引きます。従来は上位区分の話題でした。

中分類10:AI利活用 新設
  • AI利活用の原則及び指針:人間中心のAI社会原則、AI-readyな社会、AI社会原則(人間中心の原則、“公平性、説明責任及び透明性の原則”、イノベーションの原則 など)、AI事業者ガイドライン
  • 識別AI利活用:教師あり学習による予測(売上予測、成約予測、離反予測)、教師なし学習によるグルーピング(顧客セグメンテーション、店舗クラスタリング)、強化学習による支援(配車ルートの最適化)
  • 生成AI利活用:マルチモーダルAI、ランダム性の制御、RAGによる知識連携、プロンプトエンジニアリング
  • AIエージェント利活用:AIエージェント、自律性と人間の関与、ガードレール(安全性への配慮、倫理的配慮、法令順守 など)

注目したいのは、AIの分類が「機械学習の種類」ではなく「識別/生成/エージェント」という使う側の目的で切られていることです。技術の内部構造ではなく、業務でどう使うかを問う設計になっています。

05変化② 「マインド・スタンス」という、知識でない分野が入る

シラバス案を通して読んでいて、いちばん異質に見えるのが中分類7です。他の中分類は「小分類/項目/用語例」の3列表なのに、ここだけ3列目の見出しが「行動例/用語例」になっており、中身も用語ではなく文章です。

  • 変化への適応:環境や仕事・働き方の変化を受け入れ、適応するために自ら主体的に学んでいる。
  • コラボレーション:様々な専門性をもった人と社内・社外問わずに協働することが重要であることを理解し、多様性を尊重している。
  • 顧客・ユーザーへの共感:顧客・ユーザーの立場に立ってニーズや課題を発見しようとしている。
  • 常識にとらわれない発想:従来の物事の進め方の理由を自ら問い、より良い進め方がないか考えている。
  • 反復的なアプローチ:新しい取組や改善を、失敗を許容できる範囲の小さいサイクルで行い、フィードバックを得て反復的に改善している。失敗しても軌道修正して学びを得られれば“成果”であると認識している。
  • 柔軟な意思決定:既存の価値観に基づく判断が難しい状況でも、価値創造に向けて必要であれば臨機応変に意思決定を行っている。
  • 事実に基づく判断:勘や経験のみではなく、客観的な事実やデータに基づいて物事を見たり判断したりしている。適切なデータを用いることの有効性を理解し、適切なデータの入力を意識して行っている。
  • アジャイルなふるまい:アジャイルマインド、仮説検証、スプリント、ふりかえり、KPT、価値駆動、アジャイルの原則、アジャイルソフトウェア開発宣言

この8項目は、IPAが2022年から整備してきたデジタルスキル標準(DSS)の「共通スキルリスト」に定義されたマインド・スタンスとほぼ同じ構成です。つまりITパスポート試験は、人材標準の側で先に定義された「DX時代のビジネスパーソンに求められる姿勢」を、試験の出題範囲として取り込んだことになります。

本サイトの文脈で注目したいのは「事実に基づく判断」です。「勘や経験のみではなく、客観的な事実やデータに基づいて」という一文は、データドリブン経営そのものです。しかも後半に「適切なデータの入力を意識して行っている」とあり、データを使う側だけでなくデータを作る側の姿勢まで求めています。これはデータ品質の話であり、ITパスポートの段階からデータマネジメントの問題意識が入り込んでいることを示しています。

06変化③ AIが三層構造で入ってくる

新シラバス案では、AIが一箇所にまとまっているのではなく、性格の違う3つの中分類に分かれて配置されています。

1

使う(中分類10:AI利活用)

ビジネス分野。識別AI/生成AI/AIエージェントを業務のどの場面で何のために使うか。AI事業者ガイドライン、人間中心のAI社会原則、ガードレール、自律性と人間の関与。

2

仕組みを知る(中分類18:AI技術)

テクノロジ分野。機械学習(教師あり/教師なし/強化)、過学習、ニューラルネットワーク、ディープラーニング、大規模言語モデル(LLM)、コンテキスト内学習、トークン、検索拡張生成(RAG)。

3

危うさを知る(中分類27:AI倫理)

倫理・コンプライアンス分野。説明可能なAI(XAI)、ヒューマンインザループ(HITL)、AIサービスのオプトアウトポリシー、ハルシネーション、差別的表現、根拠・出典不明の出力、ディープフェイク、フロンティアAIによるリスク。

+

攻撃にも使われる(中分類23)

セキュリティ分野に「AIを悪用した攻撃」という項目が立ち、標的型攻撃・フィッシング・なりすましの巧妙化、マルウェア亜種の生成、ディープフェイクが挙がる。プロンプトインジェクションも用語例に入った。

中分類1「社会変化の動向」の用語例には、DXと並んでAX(AIトランスフォーメーション)とフロンティアAIの影響が入りました。中分類14にはフィジカルAIがあり、AIが画面の中だけの話ではなくなっていることも織り込まれています。

07変化④ 倫理とコンプライアンスが独立した大分類になる

現行のITパスポートでは、法務はストラテジ系の「企業と法務」の一部でした。新体系では大分類7として独立し、4つの中分類が割り当てられます。中でも中分類27「情報倫理・AI倫理」は新しい性格の分類です。

中分類27:情報倫理・AI倫理 新設
  • 情報倫理・情報モラル:デジタルシティズンシップ、ネチケット、撮影時・録音時・配信時の同意、同報メールの適切な利用、メール誤送信、デジタルタトゥー、ヘイトスピーチ、データのねつ造・改ざん・盗用、フェイクニュース、ファクトチェック、エコーチェンバー、フィルターバブル、悪意ある情報(マルインフォメーション)、偽情報(ディスインフォメーション)、誤情報(ミスインフォメーション)、トロッコ問題、フィルタリング、ペアレンタルコントロール
  • AI倫理・AIガバナンス:説明可能なAI(XAI)、ヒューマンインザループ(HITL)、AIサービスのオプトアウトポリシー
  • AIのリスク・脅威:セキュリティ・プライバシーへの懸念、信頼性の課題、倫理・法的リスク、フロンティアAIによるリスクと脅威、ハルシネーション、差別的表現、古い出力情報、根拠・出典不明の出力情報、出力情報の再現性・一貫性の欠如、ディープフェイク

「デジタルシティズンシップ」「トロッコ問題」という語がITパスポートに入ったことは象徴的です。技術を使えるかではなく、社会の一員としてどう振る舞うかが問われる分類になりました。

中分類28〜30:法規 新しい法律が並ぶ
  • 28 ビジネス関連法規:AI基本法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)、情報流通プラットフォーム対処法、デジタル社会形成基本法、官民データ活用推進基本法、GX推進法、中小受託取引適正化法(取適法)、特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律、不正競争防止法の限定提供データ
  • 29 プライバシー関連法規:個人情報保護法、要配慮個人情報、匿名加工情報、マイナンバー法、GDPR、忘れられる権利(消去権)、オプトイン/オプトアウト、第三者提供、データマスキング
  • 30 セキュリティ関連法規:不正アクセス禁止法、刑法(ウイルス作成罪)、サイバーセキュリティ基本法、特定電子メール法、サイバー対処能力強化法

ここに並ぶ法律の多くは2024年以降に成立・施行されたものです。試験範囲の更新が、立法の動きにそのまま追随していることが分かります。

08変化⑤ 出題範囲から外れるもの

もっと詳しく:何がどこまで外れるのか、シラバス案の全文検索の結果と「言い切れないこと」の線引きを出題範囲から外れるものにまとめました。

追加ばかりに目が行きますが、減る側も同じくらい大きな変化です。改定案の対応表では、ITパスポート試験の欄に大分類5「システムの開発・運用」(中分類20〜22)の丸が付いていません。

範囲外になる中分類 そこに含まれる内容
20 システムライフサイクルプロセス プロセス成熟度、システム要件定義・ソフトウェア要件定義、設計、実装・構築、統合・テスト、導入・受入れ支援、運用、保守・廃棄
21 開発・運用の方法論 開発ツール、開発フレームワーク、OSSの種類と特徴、アジャイル開発、DevOps、AI駆動開発、Webアプリケーション開発
22 アルゴリズム・プログラミング 情報理論、データ構造、アルゴリズム、コーディング標準、プログラム言語、データ記述言語
26 セキュリティ実装技術・評価 セキュアプロトコル、アプリケーションセキュリティ、セキュリティ評価基準(暗号・認証は中分類25に残る)
本サイトによる読み取り:現行ITパスポートには「基礎理論(離散数学、応用数学、情報に関する理論)」と「アルゴリズムとプログラミング」がテクノロジ系の入口として置かれていました。新体系ではこれに相当する中分類が範囲外になり、代わりに大分類2「データ・AIの利活用」が入ります。ITパスポートは「ITの入門」から「ビジネスパーソンのデジタルリテラシー」へ、性格を明確に振り切ったと読めます。作る側の知識は基本情報技術者試験以降に委ね、ITパスポートは使う側・判断する側の知識に集中する、という切り分けです。なお統計的手法(確率、順列、組合せ、仮説検定など)は中分類9に残るため、計算問題が消えるわけではありません。

ただしこれは改定案の対応表と公開されたシラバス案の記載範囲から本サイトが判断したものです。シラバス案はVer.0.1であり、確定版で変わる可能性があります。

09サンプル問題4問はここから出た

2026年8月31日公開のITパスポート試験サンプル問題

1問ずつの解説はこちら:4問それぞれがシラバス案のどこから出ているかと、4問を並べて見える出題の癖をサンプル問題4問の解説にまとめました。

問 分野 題材
問1 マインド・スタンス 失敗を許容する方針のチームで、不安から動けないメンバーが取るべき対応(=反復的なアプローチ)
問2 データマネジメント “データのサイロ化”の説明として最も適切なものはどれか
問3 データマネジメント 顧客データに関するメタデータはどれか
問4 情報倫理・AI倫理 生成AIサービスを事業活動で利用する際の留意事項(秘密保持契約・第三者提供・誤情報)

4問中3問が、新設・再編された分野からの出題です。とくにデータマネジメント分野から2問出ていることは、この分野の比重を示していると考えられます。ここでは本サイトのテーマと直結する問2・問3を引用します。

サンプル問題 問2 — データマネジメント分野

データマネジメントが十分に行われていない場合に生じる“データのサイロ化”に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  • ア収集したデータが、意味や来歴を説明する情報を伴わないまま蓄積され、内容を確認できず利用できない。
  • イ組織内の各部門が個別に保持するデータが相互に連携されず、組織横断での参照及び統合ができない。
  • ウ同一の項目に表記の異なる値が混在し、集計した結果が実態と一致しない。
  • エ保管期限を過ぎたデータが廃棄されずに残り、管理の対象が増え続ける。
正解と解説を見る

正解:イ

サイロとは穀物などを貯める縦長の倉庫のこと。隣に並んでいても中身は行き来しません。データのサイロ化とは、部門ごとにデータが囲い込まれて相互に連携されず、組織横断で見られなくなる状態を指します。アはメタデータの不備、ウは表記ゆれというデータ品質の問題、エはデータライフサイクル(廃棄)の問題で、いずれも別の失敗です。似た症状を並べて、どの概念の話かを切り分けさせる出題です。

出典:ITパスポート試験 サンプル問題(独立行政法人情報処理推進機構, 2026年8月31日掲載)

サンプル問題 問3 — データマネジメント分野

顧客データに関するメタデータはどれか。

  • ア顧客ごとに登録された氏名及び住所の値
  • イ顧客ごとの取引金額の合計
  • ウ顧客番号の採番の規則や粒度の説明
  • エ前月末時点の顧客数
正解と解説を見る

正解:ウ

メタデータは「データについてのデータ」、平たく言えばデータの説明書きです。ア(氏名・住所の値)はデータそのもの、イ(取引金額の合計)とエ(顧客数)はデータを集計した結果であって、どれも説明書きではありません。ウの「採番の規則や粒度の説明」だけが、そのデータをどう読めばよいかを説明しています。粒度(顧客を企業単位で数えるのか部門単位で数えるのか)を取り違えると集計が壊れるため、実務でも要になる情報です。詳しくはメタデータの解説ページをどうぞ。

出典:ITパスポート試験 サンプル問題(独立行政法人情報処理推進機構, 2026年8月31日掲載)

4問すべて演習できます:本ページで引用していない問1(マインド・スタンス分野)・問4(情報倫理・AI倫理分野)を含めた公式サンプル問題4問を、公式サンプル問題ページに解説付きで収録しました。また、シラバス案で新設・再編された領域に絞ったオリジナル問題20問も用意しています(本サイト作成、IPA公式ではありません)。原文と解答例はIPA公式PDFでご確認いただけます。

10データマネジメント試験とのつながり

ITパスポートとデータマネジメント試験は、同じ中分類8「データマネジメント」を、違う深さで問う関係にあります。両者のシラバス案の用語例を並べると、その差がはっきりします。

小分類 ITパスポート試験 データマネジメント試験(重点分野)
データマネジメントの目的と考え方 データドリブン経営、データマネジメント、データガバナンス、データライフサイクル、DIKWモデル 左記に加えて、価値創出、データ資産、マスターデータ、トランザクションデータ、データスペース、SSOT(信頼できる唯一の情報源)、およびデータマネジメント不備によって生じるリスク(データの品質低下、未秩序なデータのサイロ化、コンプライアンス違反、意思決定の遅れ・精度低下、データスワンプ)
データガバナンス (中分類8の用語例に名称のみ) 独立した小分類として立つ。データガバナンスの基本行動(評価、方針又は指示、監視)、責任と権限(アカウンタビリティ)、データ品質ルール、エスカレーションルール、および運営体制(CDO、DMO、データオーナー、データスチュワード、データエンジニア、データアーキテクト、組織構造(中央集権型・分散型・連邦型))
データ品質管理 (機能名として言及) 独立した小分類。データ品質特性(正確性、完全性、一貫性、信憑性、機密性)、データ品質モデル、データクレンジングの目的と効果、データプロファイリング・アセスメント、データ品質マネジメント(計画・制御・保証・改善)
メタデータ管理 (機能名として言及) 独立した小分類。ビジネス/テクニカル/オペレーショナルの3分類、メタデータレジストリ、リポジトリ、データ辞書、ビジネスグロッサリー、データカタログ、データリネージ、メタデータ品質・ガバナンス
データ基盤 データレイク/DWH/データマートの役割、ELT/ETL 左記に加えて、データ仮想化、データコネクタ、データファブリック、セマンティックレイヤー、セルフサービス分析、データブレンディング、データプレパレーション

ITパスポートでは「そういうものがある」と知っていれば足りたものが、データマネジメント試験では誰が責任を持ち、どう測り、どう直すかまで問われます。さらにデータマネジメント試験には科目B(技能)があり、シラバス案 Ver.0.1 では「データの適切な取扱い」「データ活用による意思決定、検証と改善」「データ活用の組織文化の醸成」「データ活用の向上」の4大項目16小項目が示されました。詳しくはデータマネジメント試験のページで整理しています。

まずは問題を解いて、新しい出題の感覚をつかんでみてください。
用語でつまずいたら、丸暗記する前に現場の言葉での解説をどうぞ。

公式サンプル問題4問を解く オリジナル問題20問を解く テーマ解説を読む

新旧シラバス対応表を見る → / データマネジメント試験(仮称)のページへ → / X(旧Twitter)@dm_exam_site でも毎朝1問ずつ出題しています。

11出典・参考リンク

※ 本ページの変更点の整理、現行シラバスとの比較、および「社会変化との対応関係」は本サイト独自のものです。シラバス案はVer.0.1であり、確定版で内容が変わる可能性があります。