このページについて
2027年度からのITパスポート試験では、大分類2「データ・AIの利活用」の下に中分類8「データマネジメント」が新しく置かれます。現行シラバスに対応する分野がないため、いま売られている参考書には該当する章がありません。
幸い、対策の範囲はかなりはっきりしています。シラバス案 Ver.0.1 がこの中分類に挙げている用語例は、数えて13個しかありません。このページでは、その13個を全部並べて解説します。
用語例はシラバス案 Ver.0.1(2026年8月31日公開)からの引用です。各用語の解説と、隣の分野との線引きは本サイト独自のものです。またシラバスの用語例は出題内容をすべて列挙したものではないため、「ここに無い=絶対に出ない」とは言い切れません。シラバス案はVer.0.1であり、確定版で変わる可能性があります。
「出題範囲等の改定案 Ver.1.0」および「シラバス(案)Ver.0.1」より
| 位置づけ | |
|---|---|
| 分野 | ビジネス |
| 大分類 | 2 データ・AIの利活用 |
| 中分類 | 8 データマネジメント |
| ITパスポートでの扱い | ○(出題範囲) |
| 何を問うか (シラバス案の【内容】) |
担当業務で日々発生するデータを適切に管理して、データを業務改善や意思決定に利活用できるようにするために必要な、データマネジメントに関する基礎知識を問う |
同じ大分類2には、中分類9「データ分析・データ利活用」と中分類10「AI利活用」が並びます。データを「整える」のが8、整ったデータを「読む」のが9、AIに「使わせる」のが10、という並びだと読めます(この整理は本サイトの解釈です)。8と9の線引きは§05で詳しく扱います。
シラバス(案)Ver.0.1 の中分類8から、小分類・項目・用語例をそのまま書き出したもの
| 小分類 | 項目 | 用語例 |
|---|---|---|
| 1 データマネジメント | データマネジメントの目的と考え方 | データドリブン経営、データマネジメント、データガバナンス、データライフサイクル、DIKWモデル |
| 1 データマネジメント | データマネジメントの機能 | データマネジメント機能(マネジメント(行政)、ガバナンス(司法・立法)、アーキテクチャ など)、データ品質管理、メタデータ管理 |
| 2 データライフサイクル | データライフサイクルの機能 | 生成、保管、処理、活用、廃棄 |
小分類は2つ、項目は3つだけです。他の中分類(たとえば9「データ分析・データ利活用」は小分類3つ・項目6つ、11「経営・組織論」は小分類3つ・項目8つ)と比べると、中分類8はかなり小さい枠です。深く問われるというより、言葉の意味と考え方を押さえておく分野だと読めます。
2026年8月31日に公開された公式サンプル問題は全部で4問です。その内訳は、マインド・スタンスが1問、データマネジメントが2問、情報倫理・AI倫理が1問。半分がこの中分類8からの出題でした。枠は小さいのに、サンプルでの比重は大きいことになります。
| 問 | 分野 | 題材 |
|---|---|---|
| 問1 | マインド・スタンス | 失敗を許容する小さいサイクルでの反復的な改善 |
| 問2 | データマネジメント | データのサイロ化に関する記述として適切なもの |
| 問3 | データマネジメント | 顧客データに関するメタデータはどれか |
| 問4 | 情報倫理・AI倫理 | 生成AIサービスを業務利用する際の留意事項 |
興味深いのは、問2の「データのサイロ化」という語が、シラバス案の用語例には載っていないことです。用語例にあるのは「データマネジメント」「データガバナンス」などで、サイロ化は出てきません。つまり用語例の暗記だけでは足りず、「データマネジメントが不十分だと何が起きるか」を理解しているかが問われていると読めます(この読み取りは本サイトの解釈です)。
語の並びはシラバス案のとおり。解説は本サイト独自のものです
データドリブン経営
勘や経験だけでなく、客観的な事実やデータにもとづいて判断していく経営のやり方。中分類7「マインド・スタンス」にも「勘や経験のみではなく、客観的な事実やデータに基づいて、物事を見たり、判断したりしている」という行動例があり、知識と姿勢の両面から問われる数少ない語です。→ データドリブン経営とは?
データマネジメント
データを「使える状態」に保つための管理活動の総称。分析や活用そのものではなく、その手前を整える営みを指します。データドリブン経営を実現するための土台、という関係で覚えると混乱しません。
データガバナンス
データの扱い方について、誰が決め、誰が守り、どう確認するかというルールと体制。管理を「実行する」のがマネジメント、そのルールを「定めて監督する」のがガバナンスです。→ データガバナンスとは?
データライフサイクル
データが生まれてから捨てられるまでの一連の流れ。次の小分類2で、その機能が生成・保管・処理・活用・廃棄の5つとして明示されています。
DIKWモデル
Data(データ)→ Information(情報)→ Knowledge(知識)→ Wisdom(知恵)の4段階で、データが価値に変わっていく過程を表したモデル。「気温32度」という数字がData、「今日は平年より5度高い」がInformation、「暑い日はアイスが売れる」がKnowledge、「明日は仕入れを増やそう」がWisdom、という順で段が上がります。
データマネジメント機能
シラバス案では「マネジメント(行政)、ガバナンス(司法・立法)、アーキテクチャ など」と、国のしくみにたとえて書かれています。ルールを決めるのが立法・司法にあたるガバナンス、決まったルールに沿って日々動かすのが行政にあたるマネジメント、その土台となる設計がアーキテクチャ、という三層です。この「行政」「司法・立法」という併記はシラバス案の原文どおりで、独特な言い回しなので、そのまま覚えておくと選択肢で迷いません。→ 誰が何を担当するのか
データ品質管理
データが正確か、揃っているか、最新か、重複していないかを保つ活動。公式サンプル問題の問2「データのサイロ化」は、部署ごとにデータがばらばらに管理されて品質が保てなくなる状態の話です。→ データ品質とは?
メタデータ管理
「データについてのデータ」を整備する活動。項目の意味、型、作成日時、責任者などがメタデータです。公式サンプル問題の問3が「顧客データに関するメタデータはどれか」を直接問いました。→ メタデータとは?
生成・保管・処理・活用・廃棄
データライフサイクルの5つの機能。廃棄まで含まれているのがポイントで、使い終わったデータを適切に消すこともデータマネジメントの一部です。個人情報の保管期間など、中分類29「プライバシー関連法規」とつながる論点でもあります。
紛らわしい2つの中分類を、シラバス案の記載で区別する
中分類8と9はどちらも「データ」の話で、名前だけでは区別しづらいところです。ただしシラバス案の用語例を並べると、担当範囲がはっきり分かれています。
| 8 データマネジメント | 9 データ分析・データ利活用 | |
|---|---|---|
| ひとことで | データを整える | 整ったデータを読む |
| 小分類 | データマネジメント/データライフサイクル | データ基盤/データ分析・データ利活用/業務分析 |
| 用語例の例 | データガバナンス、データ品質管理、メタデータ管理、DIKWモデル | データレイク、DWH、データマート、ELT/ETL、構造化データ、回帰分析、相関分析、ヒートマップ |
| 迷ったときの目安 | ルール・責任・品質・意味の話なら8 | 置き場所・統計・グラフの話なら9 |
注意したいのは、「データ基盤」「データレイク」「データウェアハウス(DWH)」は8ではなく9の用語例だという点です。データの置き場所の話は分析側に置かれています。→ データ基盤とは?
また「ひとことで」の欄と「迷ったときの目安」は、用語例の並びから本サイトが整理したものであり、IPAが示した区別ではありません。
IPAの「出題範囲等の改定案 Ver.1.0」には、試験区分ごとにどの中分類を出題するかを示した表があり、○(出題範囲)と◎(出題範囲のうちの重点分野)が使い分けられています。中分類8の行を見ると、こうなっています。
| 試験区分 | 中分類8 データマネジメント | 中分類9 データ分析・データ利活用 |
|---|---|---|
| ITパスポート試験 | ○(出題範囲) | ○(出題範囲) |
| データマネジメント試験(仮称)科目A | ◎(重点分野) | ◎(重点分野) |
つまり、このページで押さえた13語が、そのままデータマネジメント試験の中心分野になります。同じ分類体系の上に乗っていて、違うのは深さだけです。ITパスポートでは「そういうものがある」と知っていれば足りたものが、データマネジメント試験では誰が責任を持ち、どう測り、どう直すかまで問われます。
データマネジメントに興味が続いたら、次に進む先はもう用意されています。
データマネジメント試験(仮称)は2027年度の開始予定で、公式サンプル問題も公開済みです。