このページについて
2026年8月31日、IPAは新しいITパスポート試験のサンプル問題を公開しました。全部で4問です。数は少ないのですが、シラバス案22ページを読むより、この4問を見るほうが「試験がどう変わるのか」は早く分かります。
このページでは、4問それぞれがシラバス案のどこから出ているのかと、4問を並べたときに見えてくる出題の癖を整理します。問題文・選択肢はIPA公表の内容を改変せずに、公式サンプル問題のページで実際に解けるようにしています。
出題分野の対応づけと「出題の方向性」の読み取りは本サイトの解釈であり、IPAが示したものではありません。サンプル問題は検討状況に基づくもので、実際の出題内容・形式は変更される可能性があります。
ITパスポート試験 サンプル問題(IPA、2026年8月31日公開)
| 問 | 分野(シラバス案の中分類) | 題材 | 正解 |
|---|---|---|---|
| 問1 | 7 マインド・スタンス | 失敗を許容する方針のチームで、不安から動けないメンバーが取るべき対応 | ア |
| 問2 | 8 データマネジメント | “データのサイロ化”の説明として最も適切なもの | イ |
| 問3 | 8 データマネジメント | 顧客データに関するメタデータはどれか | ウ |
| 問4 | 27 情報倫理・AI倫理 | 生成AIサービスを業務利用する際の留意事項(a・b・cの組合せ) | イ |
4問とも、現行シラバスに対応する分野がない中分類から出ています。マインド・スタンス、データマネジメント、情報倫理・AI倫理は、いずれも新体系で新しく立った中分類です。いま売られている参考書には該当する章がありません。
そして4問中2問がデータマネジメントです。中分類8は小分類2つ・項目3つという小さな枠なのに、サンプルでは半分を占めました。
中分類7 マインド・スタンス
DX推進チームが「失敗してもその都度軌道修正し、学びを得ることも成果」という方針をとっている場面で、不安から動けずにいるメンバーが取るべき対応を選ばせる問題です。
正解の選択肢は、シラバス案の行動例をほぼそのままなぞっています。中分類7の「反復的なアプローチ」には、こう書かれています。
「新しい取組や改善を、失敗を許容できる範囲の小さいサイクルで行い、顧客・ユーザーのフィードバックを得て反復的に改善している」
「失敗したとしてもその都度軌道修正し、学びを得ることができれば“成果”であると認識している」
──ITパスポート試験 シラバス(案)Ver.0.1 中分類7 より
ここが他の分野と決定的に違うところです。中分類7だけは、シラバス案の列見出しが「用語例」ではなく「行動例/用語例」になっており、用語ではなく行動の記述が並びます。覚える対象が「言葉」ではなく「ふるまい」なので、暗記の仕方が変わります。
中分類8 データマネジメント
「データのサイロ化」の説明として最も適切なものを選ぶ問題です。サイロとは穀物を貯める縦長の倉庫のことで、隣り合っていても中身は行き来しません。部門ごとにデータが囲い込まれ、組織横断で見られなくなる状態を指します。
注目したいのは誤りの選択肢の作り方です。どれも実際に起きる失敗ですが、それぞれ別の概念に属します。
| 症状 | 本当は何の話か |
|---|---|
| 意味や来歴の説明が欠けている | メタデータの不備 |
| 部門ごとにデータが囲い込まれている | データのサイロ化(正解) |
| 表記ゆれがある | データ品質の問題 |
| 不要なデータが廃棄されていない | データライフサイクルの問題 |
この問題の“サイロ化”という語は、シラバス案の用語例に載っていません。中分類8の用語例にあるのは、データドリブン経営・データマネジメント・データガバナンス・データライフサイクル・DIKWモデル・データマネジメント機能・データ品質管理・メタデータ管理と、生成/保管/処理/活用/廃棄の13語だけです。
つまり用語例を暗記するだけでは足りず、「データマネジメントが不十分だと何が起きるか」を理解しているかが問われています。そして誤答の選択肢は、すべて用語例の中の別概念に対応しています。用語を1つずつ独立に覚えるのではなく、隣り合う概念との違いで押さえておく必要があります。(この読み取りは本サイトの解釈です。)
中分類8 データマネジメント
「顧客データに関するメタデータはどれか」。問2と違って、こちらはひねりのない定義問題です。メタデータは「データについてのデータ」、平たく言えばデータの説明書きです。
誤答は、データそのものの値や、データを集計した結果でした。「値」でも「集計結果」でもなく「そのデータをどう読めばよいかの説明」がメタデータ、という切り分けができれば選べます。
正解の選択肢は、採番の規則や粒度についての説明でした。粒度は実務でも要になる情報です。顧客を企業単位で数えているのか部門単位で数えているのかを取り違えると、集計そのものが意味を失います。
同じ論点は、データマネジメント試験(仮称)のシラバス案では科目Bの技能として「キー項目の粒度・範囲・発番ルールを把握・説明するスキル」という形で、より実務寄りに問われます。ITパスポートで「これはメタデータだ」と見分けられれば足りたものが、上位区分では「説明できる」ことまで求められるという関係です。
中分類27 情報倫理・AI倫理
生成AIサービスを業務で利用する際の留意事項として、a・b・cのうち適切なものの組合せを選ぶ問題です。4問のなかで唯一、選択肢が「a、b」「a、b、c」のような組合せ形式になっています。
3つの記述は、根拠がそれぞれ違います。
| 記述 | 何に根ざしたリスクか |
|---|---|
| 機密情報を外部の生成AIに入力する | 秘密保持契約(NDA)に抵触するおそれ |
| 個人データを外部の生成AIに入力する | 個人情報保護法上の第三者提供に該当する可能性 |
| 出力をそのまま製品開発に使う | ハルシネーション(もっともらしい誤りの生成) |
法務が2つ、技術特性が1つ。3つとも別々の根拠に立っているのに、どれも「生成AIを業務で使うときの当たり前の注意」として並んでいます。新体系で法規が中分類28〜30に分かれ、情報倫理・AI倫理が中分類27として独立したことを考えると、この分野は横断的に問われると読めます。(この読み取りは本サイトの解釈です。)
なお「ハルシネーション」はシラバス案の中分類27に、AIのリスク・脅威の用語例として明記されています。
以下はすべて本サイトの読み取りです
用語の丸暗記では届かない
問2の「サイロ化」はシラバス案の用語例にありません。問1にいたっては覚える用語すらなく、行動を選ばせます。用語集をなぞるだけの対策では、4問中2問が取りこぼしになります。
隣り合う概念との違いで問う
問2は「サイロ化・メタデータ不備・品質・ライフサイクル」の切り分け、問3は「値・集計結果・説明書き」の切り分けでした。誤答の選択肢が、同じ中分類の別の用語になっています。
現場で困る場面が舞台になる
4問とも、抽象的な定義ではなく具体的な業務場面から入ります。DX推進チーム、顧客データ、生成AIの業務利用。「担当業務で」という言い回しがシラバス案の【内容】に繰り返し出てくることと対応しています。
サンプルはまだ4問しかない
この4問だけで全体の傾向を断定するには数が足りません。ここに書いた「癖」は、4問という限られた材料からの読み取りです。追加のサンプル問題が公開されたら見直します。