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テーマ解説 — データの法律と倫理

データの法律と倫理とは?
「そのデータ、使って大丈夫?」の考え方

データは、コピーも加工も一瞬でできてしまいます。だからこそ「技術的にできること」と「使ってよいこと」の間にずれが生まれがちです。このページでは、ITが専門でない方に向けて、データを扱うときに知っておきたい法律と倫理の考え方を現場の言葉で解説します。

読了目安 約8分 対象:業務部門でデータを扱う方 データマネジメント試験(仮称)対応

01こんな経験、ありませんか

  • 提案資料の見栄えをよくしようと、ネットで見つけた画像やグラフをそのまま貼った
  • 取引先から「この案件のために」と受け取った販売データを、別の企画の分析にも流用しようとした
  • 「氏名は消したから大丈夫」と、顧客リストを外部の委託先に渡そうとした
  • キャンペーンで集めたメールアドレスに、関係のない別商品の案内を送ろうとした
  • アンケート結果の報告で、都合の悪い回答を「例外」として外したグラフを作った

これらはすべて「データの法律と倫理」のテーマです。ポイントは、どれも悪気なく、仕事を早く進めようとして起きるということ。法律の条文を暗記するより、「このデータには誰の権利が付いているか」を考える習慣を持つことが、トラブルを防ぐいちばんの近道です。

02データには必ず「持ち主の権利」が付いている

データの法律は、そのデータに誰の権利が付いているかで整理すると分かりやすくなります。図書館の本にたとえるなら、本そのものには「書いた人の権利」があり、貸出記録には「借りた人のプライバシー」がある、というイメージです。業務でよく出会うのは、次の3つの持ち主です。

冒頭の「あるある」も、この3つで整理できます。ネットの画像は「作った人」、取引先のデータは「会社(取引先)」、顧客リストやメールアドレスは「本人」の権利の問題です。

03試験用語を現場の言葉に置き換えると

名前より「誰の、どんな権利を守るルールか」で覚えるのがおすすめ

試験用語 現場の言葉でいうと 職場での例
著作権 作った人の権利 他社のWebサイトのグラフを、許可なく自社の資料に転載する
営業秘密 会社が秘密として管理している情報 「社外秘」として管理された顧客名簿を、転職先に持ち出す
限定提供データ 限られた相手にだけ提供しているデータ 会員企業に有償で提供している地図データや統計データ
オプトイン/オプトアウト 事前に同意をもらう/嫌なら止められるようにする メール配信の前に「受け取る」に同意してもらうのがオプトイン、後から「配信停止」できるようにするのがオプトアウト
匿名加工情報 誰のことか分からず、元にも戻せないよう加工した情報 氏名を消すだけでなく、生年月日を年代に丸める、珍しい属性を削るなどして加工する
データマスキング 見せる相手に応じて一部を伏せる 委託先に渡すテスト用データで、電話番号を「090-****-1234」のように隠す
GDPR EUの個人データ保護のルール EUの顧客に商品を販売している日本企業も、対象になることがある
データのねつ造・改ざん・盗用 ないデータを作る・都合よく書き換える・他人のものを無断で使う アンケートの都合の悪い回答を、根拠なく「例外」として除外する

最後の行のように、法律違反でなくても、データの扱いとして不誠実なものがあります。これが「情報倫理」の領域です。データを都合よく切り取った報告は、たとえ罰せられなくても、組織の意思決定を誤らせ、信頼を失わせます。

04なぜ「つい、やってしまう」のか

データの法律や倫理の問題は、たいてい次のような思い込みから生まれます。

  • 「ネットに公開されているから自由に使える」——公開されていることと、使ってよいことは別。公開されていても著作権はある
  • 「社内で使うだけだから大丈夫」——個人情報は、社内であっても、集めたときの利用目的の範囲で使うのが原則
  • 「氏名を消したから個人情報ではない」——住所や生年月日、購買履歴などを組み合わせれば、誰のことか分かってしまう場合がある
  • 「少しくらい見栄えよく整えても問題ない」——都合の悪いデータを外すのは、整えるのではなく改ざん

デジタルのデータは、コピーしても加工しても「減らない」し「痕跡が残りにくい」ため、紙の書類よりも気軽に扱ってしまいがちです。だからこそ、使う前に一度立ち止まる習慣が大切になります。

05使う前の3つの確認:誰のデータ? → 何のため? → 渡して大丈夫?

CHECK 1

誰のデータ?

そのデータに付いている権利を確認します。作った人(著作権)、会社(営業秘密・限定提供データ)、本人(個人情報)のどれか。社外から受け取ったデータなら、契約や利用条件で使える範囲が決まっていることがほとんどです。

CHECK 2

何のために集めた?

個人情報なら、集めたときに本人に伝えた利用目的の範囲かを確認します。目的の外で使うなら、原則として本人の同意が必要です。取引先のデータも、受け取ったときの約束の範囲で使います。

CHECK 3

加工・提供して大丈夫?

外部に渡す・公開するなら、本当に誰のことか分からなくなっているか、必要な手続きを踏んでいるかを確認します。委託先に渡すデータは、必要な項目だけに絞り、マスキングするのが基本です。

迷ったら、一人で判断せず、社内の法務部門や個人情報保護の担当者に相談するのがいちばんの正解です。本ページは一般的な考え方の解説であり、個別の案件についての法的な助言ではありません。データの利用ルールを誰が決め、誰に相談すればよいかを組織として整えておく話は、「データガバナンス」の解説で扱っています。

06試験ではこう問われる

EXAM NOTE — データマネジメント試験(仮称)

2026年8月31日公開のシラバス案 Ver.0.1 では、科目Aの「その他の分野」として大分類7「倫理・コンプライアンス」が設けられています。中分類27「情報倫理・AI倫理」にはデータのねつ造・改ざん・盗用、ファクトチェック、エコーチェンバー、フィルターバブルが、中分類28「ビジネス関連法規」には著作権法、不正競争防止法、営業秘密、限定提供データが、中分類29「プライバシー関連法規」には匿名加工情報、オプトイン、オプトアウト、データマスキング、匿名化、GDPRなどが並びます。

シラバス案は、この分野のねらいを「日々の業務におけるデータの取扱いが、他者の権利侵害やプライバシー侵害に繋がり得るというリスクを正しく認識」することだと説明しています。条文の細かな知識よりも、業務の場面で「これは使ってよいか」を判断できるかが問われると考えられます。なお、2026年6月公開の公式サンプル問題には、この分野を正面から題材にした問題はまだありません。

ITパスポート試験でも問われます。シラバス案Ver.0.1でも、限定提供データ、匿名加工情報、オプトアウト、GDPR、フィルターバブルなどが用語例に挙げられています。分野構成の変化はITパスポート試験はこう変わるで整理しています。

例題 — 力だめしに1問どうぞ

不正競争防止法における「限定提供データ」の説明として、最も適切なものはどれか。

  • ア誰でも自由に利用・再配布できるよう公開された、いわゆるオープンデータのことである。
  • イ個人情報保護法において、取扱いに特に配慮を要すると定められた要配慮個人情報のことである。
  • ウ業として特定の者に提供され、電磁的方法により相当量蓄積・管理されているデータであり、秘密として管理されている「営業秘密」に当たらないものも保護の対象となる。
  • エ社外には一切提供しないことを条件に、秘密として厳格に管理されているデータのことである。
正解と解説を見る

正解:ウ

営業秘密として保護されるには、秘密管理性・有用性・非公知性の3要件を満たす必要があります。ところが、会員企業に有償で提供する統計データや地図データのように、複数の相手に共有されているデータは「秘密として管理されている」とは言いにくく、この要件を満たしません。そこで、特定の相手に業として提供され、電磁的方法で相当量蓄積・管理されているデータを「限定提供データ」として保護する仕組みが設けられました。エは営業秘密の説明に近く、アのオープンデータは誰でも使える前提なので保護の対象ではありません。イは個人情報保護法の用語です。

出典:本サイト作成のITパスポート試験のオリジナル問題(IPA公式の問題ではありません)。データマネジメント試験(仮称)でも中分類28の用語例です。オリジナル問題演習で続きが解けます。

+あわせて覚えたい試験用語ミニ辞典

営業秘密の3要件= 秘密にしていて、役に立ち、知られていない

秘密として管理されていること(秘密管理性)、事業に役立つ情報であること(有用性)、公然と知られていないこと(非公知性)。3つすべてを満たして初めて営業秘密として保護される。

匿名加工情報と仮名加工情報= 元に戻せないか、照合すれば分かるか

匿名加工情報は、特定の個人を識別できず、元にも戻せないように加工したもの。仮名加工情報は、他の情報と照合しない限り個人を識別できないようにしたもので、主に社内での分析に使う。

ファクトチェック= その情報、本当?を確かめる

情報の真偽や根拠を、元の情報源にさかのぼって確認すること。生成AIの出力を使うときにも欠かせない。AI利活用の解説もあわせてどうぞ。

エコーチェンバー/フィルターバブル= 似た意見ばかりが響く部屋/好みの情報の泡

エコーチェンバーは、同じ考えの人どうしで意見を交わすうちに、その考えが強まっていく現象。フィルターバブルは、推薦の仕組みによって自分好みの情報ばかりに囲まれる現象。

データスチュワード= データの世話役

担当領域のデータの利用ルールを現場で守り、「このデータは使ってよいか」という相談にも応じる役割。役割解説ページで詳しく扱っています。

理解できたか、実際の問題で確かめてみましょう。
法規や情報倫理を題材にした問題を一問一答形式で解けます。

オリジナル問題演習を解く 公式サンプル問題を見る

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07出典・参考

※ 本ページの解説・たとえ話・用語の言い換えは本サイト独自のものであり、個別の案件についての法的な助言ではありません。2026年8月31日公開のデータマネジメント試験(仮称)シラバス案 Ver.0.1 で、本ページで扱った用語が科目Aその他の分野(中分類27〜29)の用語例に含まれることを確認しています(仮名加工情報はデータマネジメント試験の用語例にはなく、プロフェッショナルデジタルスキル(データ・AI)試験(仮称)のシラバス案に含まれる用語です)。